最終更新日: 2025/1/26
「M&A・事業承継における競業避止義務とは何か知りたい」
「競業避止義務の注意点を知りたい」
このようにお考えではありませんか?
本記事ではM&A・事業承継における競業避止義務について、概要や重要性、注意点を解説します。
あわせて、競業避止義務違反とみなされた事例も紹介するので、M&A・事業承継を検討する際の参考にしてください。
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まずは、M&A・事業承継における競業避止義務の概要について、以下の3点に焦点を当てて解説します。
それぞれ説明します。
競業避止義務とは「ある者が他者の営業・事業活動と競業する業務を行わない義務」のことです。
適用される場面には、競業事業を新しく立ち上げる場合や競業する企業へ転職する場合など、複数のケースが含まれます。
本記事では、以下の2つの場合を取り上げて解説します。
■役員・従業員を想定した競業避止義務
役員・従業員を想定した競業避止義務では、役員・従業員が自社に損害を及ぼすような競業行為を行わないよう求められます。
■M&Aにおける競業避止義務
M&Aにおける競業避止義務は、M&Aが成約した後に売り手企業に求められる義務で、売却事業と競業する事業を再度行うことを禁止します。
例えばM&Aでは「レストランチェーンを売却した後に、売り手が同じエリアで同様のレストランを新規開業することを禁止する」といったケースが当てはまるでしょう。
M&A・事業承継における競業避止義務は、売り手企業が売却事業と競業する事業を再度行うことで、買い手企業が損害を受けないようにするために重要です。
M&Aの買収価格には対象事業のノウハウや市場シェアなどが含まれるため、仮に売り手がM&A後に同種の事業を立ち上げると、買収した事業の価値が損なわれる可能性があります。
そこで、譲渡契約の中に競業避止に関する文言を加えることで、売り手が譲渡後に買い手の事業と競合しないよう求めます。
M&A・事業承継における競業避止義務では、具体的には以下のような内容が盛り込まれます。
義務の対象となる期間は、売り手・買い手双方の合意があれば、契約書において自由に定めることが可能です。
ただし事業譲渡においては、競業避止義務に関する文言が契約書に明記されていなくても、会社法に基づき「売り手が競業避止義務を負う」ことが規定されています。なお、期間は原則20年(最大30年まで延長可能)です。
しかし、事業譲渡の場合でも一般的には、別途契約書で義務の対象となる期間(2〜5年程度)を設定するケースが少なくありません。
対象エリアについて会社法では、事業譲渡後「同一の市町村内と隣接する市町村内」において同一の事業を行うことを禁止しています。
ただし、売り手・買い手双方の合意に基づいて、対象エリアについても調整可能です。
対象業種に関しても、条項に記します。売り手・買い手双方の同意によって、会社法で規定されている「同一の事業」よりも広い、または狭い範囲を対象とすることも可能です。
売り手企業の競業行為が発覚した場合、買い手側は競業行為の差止めや、損害賠償の請求が可能です。契約時の条項には、違反時の具体的なペナルティについても記します。
会社法は、会社の設立・運営・清算に関する規定や手続きを定めた法律で、内容には競業避止義務に関することも含まれます。
ここでは、競業避止義務に関わる会社法の規定について、以下2つのケースに分けて解説します。
それぞれ説明します。
事業譲渡に関しては、会社法(21条)において、売り手側に対する競業避止義務が明確に規定されています。
ただし、売り手・買い手双方の合意をもとに競業避止に関する内容を譲渡時の契約に加えることで、義務が適用される期間や事業範囲、対象エリアなどの拡大・縮小が可能です。
譲渡の対象となる事業によっては「同一・隣接市区町村」といった範囲が適さないケースもあるため、当事者間の合意をもって、より現実的な設定が為されます。
また、売り手と買い手の双方の合意があれば、特例によって競業避止義務の排除も可能です。
株式譲渡や会社分割など、事業譲渡以外の手法を用いる場合には、会社法を含む法律での規定はありません。
ただし、M&Aの有効性を高めるために、株式譲渡や会社分割などにおいても競業に関する制限を設けることが一般的です。
制限を定める際は、売り手・買い手双方の合意をもって、事業譲渡のケースと同様に譲渡契約にて規定します。
競業避止義務の内容は、M&Aの成立や譲渡後の企業経営に大きく影響するため、契約に関する規定においては経験の豊富な専門家のサポートを受け、最大限の配慮をもって定めましょう。
M&A・事業承継の競業避止義務における注意点としては、以下の4点が挙げられます。
それぞれ説明します。
M&A・事業承継の競業避止義務においては、売り手・買い手が協力し、具体的な期間や範囲などを明確に定めることが重要です。
売り手側からすると、義務違反として訴えられるリスクをなるべく減らすため、期間は短く、対象となる事業範囲は狭くすることが望ましいです。一方で、買い手側は買収した事業をなるべく保護したいと考えるでしょう。
対象となる範囲が曖昧な場合、双方で解釈のずれが生じ、紛争に発展する恐れがあります。
義務が適用される期間や範囲については明確に定め、最終契約に条項として明記しておきましょう。
自社のケースでは、どれくらいの期間・範囲が合理的で妥当と言えるのか、判断が難しい場合には専門家へ相談することも大切です。
仮に競業避止義務が遵守されなかった場合には、事業差止めや損害賠償を請求される可能性があります。
義務を負う売り手側は意図せず規定に抵触しないように、内容を十分に理解した上で、慎重にビジネスを進める必要があります。
また、違反があった場合の具体的な対応については、賠償金や差止請求の方法を含めて契約書へ盛り込んでおくとスムーズです。
役員や従業員は憲法で保障されている職業選択の自由を持ち、基本的に会社法によって競業避止義務が直接課されることはありません。
ただし、就業規則や誓約書により別途契約を結ぶことで、従業員にも義務を課すことが可能です。
内容としては、在職中や退職後の一定期間に、競合事業の運営や競合する企業への転職を禁止するものになります。
注意点は、競合避止を制限する内容が、不当に職業選択の自由を侵害する場合は無効となることです。期間や事業、地理的な領域は合理的な範囲で定めましょう。
注意点の4つ目は、対象の期間・地域・事業範囲があまりに広範囲の場合、独占禁止法に抵触する恐れがあることです。
競業避止義務を定める際は、独占禁止法における不当な取引制限や不公正な取引方法と判断されないよう、M&Aアドバイザーや法律の専門家などの手も借りて十分に注意して条項を定めましょう。
ここでは、M&A・事業承継に関する競業避止義務への理解を深める参考として、実際にあった判決事例を紹介します。
原告(買い手企業)は、被告(売り手企業)から洗剤や洗濯用品の販売事業を譲り受けました。
しかし、被告は事業譲渡後も同じ名称を使用して同様の商品を販売し続けたため、原告は被告の行為が不正競争に当たるとして、営業表示の使用差止めや損害賠償を求めて提訴しています。
■判決内容
被告が同名称を使用し続けたことは原告の営業上の利益を侵害し、不正競争防止法に違反すると判断され、被告に対し以下の命令が下されました。
結果として、被告は同名称を使用した製品の製造・販売・広告を停止し、既存の広告物や製品から同名称を削除する義務を負いました。また、原告に対して損害賠償金を支払うこととなりました。
参考元:平成27年(ワ)第7051号 不正競争行為差止等請求事件
原告(買い手企業)は、被告(売り手企業)から婦人用中古衣類を売買するウェブサイトを譲り受けました。
しかし、被告企業は事業譲渡後、新たに類似のウェブサイトを立ち上げ同様の事業を開始。これに対し原告は、被告企業の行為が競業行為に該当するとして、事業の差止めと損害賠償を求めて提訴しています。
■判決内容
第一審では被告会社に対し、ウェブサイトを利用した婦人用中古衣類の売買事業の差止めが命じられましたが、損害賠償については因果関係が明確でないとして棄却されました。
原告(買い手企業)は第一審の判決を不服とし、上告。控訴審では被告企業の行為が競業行為であると判断されるとともに、第一審で棄却された損害賠償請求についても認められ、支払いを命じています。
参考元:
今回は、M&A・事業承継における競業避止義務について、概要や重要性、注意点とあわせて、競業避止義務違反とみなされた事例を解説しました。
M&A・事業承継において競業避止義務は、売り手企業が競合事業を行うことによる、買い手企業への不利益を防ぐために重要です。
M&A・事業承継の際は、競業避止義務についても十分に理解した上で、譲渡手続きを進めましょう。
競業避止義務は、期間や範囲を合理的な範囲内で設定する必要があり、場合によってはM&Aの専門家へ相談することも大切です。
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齋藤 康輔シェアモル株式会社 代表取締役
東京大学教養学部基礎科学科在学中に、半導体(シリコン)のシミュレーションを専攻する傍ら、人材会社にてインターン。
インターン中に人材会社向け業務システムを開発し、 大学卒業後の1年間、上記人材会社にて勤務後、 共同出資で2007年3月に上記システム「マッチングッド」を販売する会社、 マッチングッド株式会社を設立。
12年の経営の後、2019年1月に東証プライム上場企業の株式会社じげんに株式譲渡。
2019年9月、売却資金を元手に、シェアモル株式会社を設立。
自身のM&Aの経験から、買い主と売り主の間での情報の非対称性や、 M&A仲介会社が出している付加価値に疑問を感じ、 自身が思わず依頼したくなるような、 付加価値の高いM&A仲介サービスを提供したいと強く思い、 IT技術をフル活用したM&A仲介事業「シェアモルM&A」をスタート。
現在はシェアモルM&Aと、SEOに強い文章をAIが作成する「トランスコープ」を展開中。