最終更新日: 2025/3/11
「資本性劣後ローンとはどのようなものか知りたい」
「メリットやデメリットを詳しく知りたい」
このようにお考えではありませんか?
資本性劣後ローンは企業の財務基盤を強化し、資金調達の選択肢を広げる手段のひとつです。本記事では、資本性劣後ローンの概要や特徴、メリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
また、資金調達の方法としてはM&Aも有力な選択肢のひとつです。
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資本性劣後ローンとは、返済順位が低く、自己資本とみなされる長期借入金のことで、企業の財務基盤を強化し、資金調達の選択肢を広げるために役立ちます。
「劣後」とは「優先」の反対の意味で、他の債権よりも支払い順位が低いことを表します。万が一、会社が倒産した場合には、通常の借入金や債務の支払いが優先されるため、劣後ローンの返済が行われる前に会社の資産が枯渇するケースもあり得るでしょう。
そのため、劣後ローンは回収リスクの高い資金として位置づけられています。通常の借入金よりも回収の可能性が低いため、会計上では自己資本に近い性質を持つ資金とみなされることが多く、これが「資本性」という名称の由来となっています。
日本政策金融公庫の資本性劣後ローンを例に、概要を紹介します。
融資対象 | ・国民生活事業:新規開業やスタートアップ支援資金などの融資制度を利用できる法人および個人企業 ・中小企業事業:新企業育成貸付などの融資制度の適用要件を満たす企業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
融資限度額 | ・国民生活事業:7,200万円 ・中小企業事業:15億円 | |||||
返済期間 | 5年1ヶ月〜20年 | |||||
利率(年) | 融資後は毎年の業績に応じて、返済期間ごとに以下の2種類の利率が適用される | |||||
税引後当期 純利益額 | 返済期間 | |||||
5年1ヶ月 | 5年1ヶ月超 7年以内 | 7年超 10年以内 | 10年超 15年以内 | 15年超 20年以内 | ||
0円以上 | 3.25% | 3.40% | 3.65% | 3.80% | 3.95% | |
0円未満 | 0.50% | 0.50% | 0.50% | 0.50% | 0.50% | |
担保 | 無担保 | |||||
保証人 | 無保証人 |
参考:日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」
資本性劣後ローンのおもな特徴は、以下の3点です。
資本性劣後ローンは、最終的な返済期限まで元本の返済が不要な「期限一括返済」が基本です。
最終回に元本を一括で返済する仕組みで、借入期間中は利息のみを支払っていきます。
資本性劣後ローンは、業績に応じて金利が変動し、業績が振るわない場合は金利が引き下げられる仕組みです。
赤字のときは金利負担を小さく抑えられるため、安定的な返済計画を立てられます。
資本性劣後ローンによる借入は、金融機関の資産査定において自己資本として扱うことが可能です。なお、自己資本として認められる割合は以下のとおりです。
償還期限までの残存期間 | 資本とみなす割合 | 負債とみなす割合 |
---|---|---|
5年以上 | 100% | 0% |
4年以上5年未満 | 80% | 20% |
3年以上4年未満 | 60% | 40% |
2年以上3年未満 | 40% | 60% |
1年以上2年未満 | 20% | 80% |
1年未満 | 0% | 100% |
自己資本として認められる割合は、償還期限までの残存期間に応じて、5年ごとに20%ずつ減少します。
資本性劣後ローンの特徴を踏まえ、以下に通常の融資との違いをまとめました。
項目 | 資本性劣後ローン | 通常の融資 |
---|---|---|
対象者 | 一定要件を満たす企業 | 特に制限なし |
返済期間 | 5年1ヶ月〜20年 | それぞれの制度による |
返済方法 | 期限一括返済 | 毎月返済 |
利率 | 業績に連動 | 固定、変動金利 審査により異なる |
担保・保証人 | 無担保・無保証人 | 担保の差し入れ・人的保証が必要 |
その他 | ・金融機関の資産査定において自己資本とみなせる ・倒産時は他の債務に劣後する ・融資後5年間は一括返済不可 | ・負債が増える ・期限に関係なく繰り上げ返済が可能 |
資本性劣後ローンは、対象者に制限があり、返済期間や返済方法も一般的な融資とは異なります。
業績に応じて利率が変動する点や、元金は最終回に一括で返済する点も通常の融資とは大きく異なるため、違いをしっかりと理解しておきましょう。
資本性劣後ローンは通常の借入とは異なり、自己資本に近い資金として扱われるため、以下のような状況で有効に活用できます。
▪️スタートアップの資金調達
新しく事業を立ち上げたばかりのスタートアップ企業は、まだ十分な利益が出ておらず、通常の銀行融資を受けるのが難しい場合があります。資本性劣後ローンは、毎月の元本返済が不要なため、資金繰りの負担を抑えながら経営の安定と成長を目指せます。
▪️業績が一時的に悪化した企業の財務改善
企業が経営不振に陥った場合、通常の借入では返済負担が増えてしまい、かえって財務を悪化させる可能性があります。資本性劣後ローンなら、当面の資金繰りを安定させながら業績の回復を図ることが可能です。
▪️新型コロナ対策としての資本性劣後ローン(取扱終了)
新型コロナウイルスの影響で経営が難しくなった企業を支援するため、期間限定で特別な資本性劣後ローンが導入されていました。なお、「新型コロナ対策資本性劣後ローン」は、2025年2月末で新規の取り扱いが終了しています。
資本性劣後ローンのメリットとしては、以下の5つが挙げられます。
それぞれ説明します。
資本性劣後ローンは「期限一括返済型」のため、借入期間中は元本を返済する必要がなく、毎月の支払いは利息のみです。
そのため、資本性劣後ローンを新たに借りても元本を返済する負担が増えず、資金繰りが悪化しにくいというメリットがあります。これは、事業の成長や財務の安定にとって大きな利点と言えるでしょう。
資本性劣後ローンは、毎年の業績に応じて金利が見直される仕組みです。とくに、赤字決算の場合は適用金利が低下し、返済負担が軽減される点が大きな特徴です。
例えば、日本政策金融公庫の資本性劣後ローンでは、決算で最終利益がマイナスとなった場合には翌1年間の金利が0.50%に引き下げられます。
通常の融資と比べて、業績が厳しいときには利息の負担を抑えられるため、経営が苦しい状況でも資金繰りを安定させやすいのはメリットと言えるでしょう。
資本性劣後ローンは金融機関の評価において、返済期限までの残りの期間に応じて、すべてまたは一部が自己資本とみなされます。そのため、資本性劣後ローンを借りると貸借対照表上では自己資本が増えたように見え、財務基盤が安定したと判断されやすくなります。
例えば、決算書上では負債が資産を上回っている債務超過の状態でも、債務超過額を上回る資本性劣後ローンを借りれば、金融機関からは「債務超過ではない企業」として評価されることが可能です。
結果、財務基盤が安定していると見られ、他の金融機関から追加で融資を受けやすくなるというメリットがあります。
通常の融資では、金融機関から担保や保証人を求められることが多く、これが資金調達の大きなハードルになります。
一方で、資本性劣後ローンは担保や保証人が不要な場合が多く、とくに日本政策金融公庫といった政府系金融機関では担保や保証人が不要という傾向が強いため、事業者にとって利用しやすい融資制度です。
資本性劣後ローンは、通常の借入金よりも返済の優先順位が低い(劣後する)という特徴があるため、企業が倒産した場合、担保付きの借入金や税金、従業員の給与、取引先への未払い金が優先して返済され、それらがすべて支払われた後に資本性劣後ローンの返済が行われます。
劣後性により、経営が一時的に悪化してもすぐに返済を求められるリスクが低く、資金繰りの柔軟性が高まるメリットがあります。
一方で、資本性劣後ローンには以下のようなデメリットがあります。
それぞれ説明します。
資本性劣後ローンの返済方式は「期限一括返済型」のため、借入期間中は元本の返済が不要です。しかし、返済期限を迎えると借入額全額を一括で支払う必要があり、何千万円、場合によっては何億円規模の資金が一度に必要になるケースもあります。
そのため、返済のタイミングに備え、事前に十分な資金を確保しておくことが必要不可欠です。仮に十分に資金の準備ができていないと、返済後に手元の資金が枯渇し、事業継続が困難になるリスクがあります。
資本性劣後ローンは、金融機関にとって回収リスクが高いため、一般的な融資と比べて金利が高めに設定される傾向があります。
とくに、業績が好調な場合には適用金利が高くなるので、通常の融資よりも負担を感じる可能性があります。
また、借入期間が長くなるほど支払う利息の総額も増え、結果としてコストが大きくなる可能性があります。
そのため、資本性劣後ローンを利用する際は、業績が好調な場合の金利負担や長期的な借入時のコストを十分に考慮し、他の融資方法と比較しながら慎重に判断することが重要です。
資本性劣後ローンの審査は、一般の融資よりも厳格に行われる傾向があります。これは、金融機関にとってリスクの大きい融資であり、長期間にわたって元本の返済がないため、慎重な審査が必要だからです。
すべての企業が利用できるわけではなく、資本性劣後ローンによる資金調達が実現しない可能性もあるため、資本性劣後ローンを利用する際は事前に財務状況を整え、資金調達の計画をしっかりと立てることが重要です。
今回は、資本性劣後ローンの概要や特徴、メリット・デメリットについて分かりやすく解説しました。
資本性劣後ローンは、期限一括返済型であること、業績に応じた金利が適用されること、借入金が自己資本としてみなされることなどの特徴を持っています。
資金調達の有力な選択肢となるため、メリット・デメリットを十分に理解し、財務基盤の強化に役立てると良いでしょう。
なお、資金調達の方法としてはM&Aも有力な選択肢のひとつです。
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最終更新日: 2025/3/11
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齋藤 康輔シェアモル株式会社 代表取締役
東京大学教養学部基礎科学科在学中に、半導体(シリコン)のシミュレーションを専攻する傍ら、人材会社にてインターン。
インターン中に人材会社向け業務システムを開発し、 大学卒業後の1年間、上記人材会社にて勤務後、 共同出資で2007年3月に上記システム「マッチングッド」を販売する会社、 マッチングッド株式会社を設立。
12年の経営の後、2019年1月に東証プライム上場企業の株式会社じげんに株式譲渡。
2019年9月、売却資金を元手に、シェアモル株式会社を設立。
自身のM&Aの経験から、買い主と売り主の間での情報の非対称性や、 M&A仲介会社が出している付加価値に疑問を感じ、 自身が思わず依頼したくなるような、 付加価値の高いM&A仲介サービスを提供したいと強く思い、 IT技術をフル活用したM&A仲介事業「シェアモルM&A」をスタート。
現在はシェアモルM&Aと、SEOに強い文章をAIが作成する「トランスコープ」を展開中。