最終更新日: 2025/1/13
「クロスボーダーM&Aとは、どのようなものか知りたい」
「クロスボーダーM&Aを成功させるコツを知りたい」
このようにお考えではありませんか?
本記事では、クロスボーダーM&Aの概要やメリットを解説するとともに、成功のコツや注意点を説明します。
クロスボーダーM&Aの事例も紹介するので、ぜひ、海外企業とのM&Aの参考にしてください。
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クロスボーダーM&Aとは、国境を越えて行われるM&Aのことであり、売り手企業または買い手企業のいずれかが海外企業であるM&Aのことです。
特徴として、クロスボーダーM&Aは大企業によって多く行われ、M&Aの規模も比較的大きいケースが多く見られます。
ただし、近年は中小・中堅企業が海外進出するのに伴い、中・小規模のクロスボーダーM&Aが増えてきています。
また、海外企業を買収した場合は、国内企業同士のM&Aに比べてPMI(M&A後に企業同士を統合させる過程)が難しいことも特徴です。
クロスボーダーM&Aでは国の風土や文化の違いを考慮しなければならず、組織を統合する際のコミュニケーションが難しいことが理由に挙げられます。
クロスボーダーM&Aには以下の4種類があります。
それぞれ説明します。
IN-OUT型とは、買い手である日本企業が、売り手である海外企業を買収するケースです。
以前は大企業によるIN-OUT型のM&Aが多く見られ、対象となる企業は欧米企業が主流でした。
近年では、日本の中小企業による、アジアの新興国の企業を対象としたIN-OUT型のM&Aが増えてきています。
OUT-IN型は、買い手である海外企業が、売り手である日本企業を買収するケースです。
以前は、欧米企業が買い手企業となるケースが多く見られました。しかし、近年では欧米企業だけでなく、中国系企業などが買い手となるケースが増えています。
Out-Out型とは、買い手企業と売り手企業の双方とも日本企業ではなく、海外の企業同士で行われるM&Aのことです。
例えば、日本企業の海外子会社が、現地企業に買収されるケースもOut-Out型に該当します。
JV型は、日本の企業と海外企業が共同出資し、ジョイントベンチャー(JV)を設立するM&Aです。
JVとは、複数の企業が互いに資金や技術、人材、ノウハウ、設備といったリソースを共有し、新しい会社を設立して事業を行うことです。
クロスボーダーM&Aでは、株式譲渡によるM&Aが多くみられる他、三角合併やLBOなどの手法が用いられます。
ここでは、三角合併とLBOについて解説します。
三角合併は、おもにOUT-IN型のM&Aに用いられます。
おもな流れは、以下のとおりです。
買い手の親会社・子会社・売り手企業の3社によりM&Aが行われることから、三角合併と呼ばれています。
三角合併により、買い手の海外企業は売り手の日本企業を、自社の100%子会社として保有できます。
LBOは、売り手企業の資産や信用力を担保に金融機関から資金を調達し、買収する手法です。
海外における大型のM&Aでよく用いられる方法で、借金返済も売り手企業の資産や収益によって賄われるため、買い手としては限られた自己資金でM&Aが可能です。
また、利息の返済は損金として算入できるので、節税効果も期待できます。
一方で、LBO実施後に何らかの原因で業績が落ちた場合には、多額の借金が残るリスクがあります。
クロスボーダーM&Aには、以下5つのメリットがあります。
それぞれ説明します。
クロスボーダーM&Aのメリットの1つ目は、海外市場の開拓につながる点です。
日本国内の経済市場は縮小傾向にありますが、新興国では今後の市場拡大が見込まれるため、海外市場を開拓できれば自社商品を販売する機会を生み出せます。
また、自社の持つ技術・ノウハウを現地企業に取り入れることで、シナジー効果も期待できます。
海外市場の新規開拓は、競合相手がまだ存在しない場合も多く、大きな利益が期待できるでしょう。
クロスボーダーM&Aのメリットの2つ目は、海外での人材や拠点を確保できることです。
海外進出を考える際、現地の人材や事業所の確保がハードルとなるケースが少なくありません。
文化や労働意識の違いがある中、自社で一から現地調査を行い、人材や拠点を確保することは非常に難しいためです。
クロスボーダーM&Aを行うことで、事業に精通した人材だけでなく事業に必要な拠点も確保できるため、より少ない労力で素早い事業展開が可能になるでしょう。
クロスボーダーM&Aのメリットの3つ目として、新製品の開発が挙げられます。
海外には日本にない技術やノウハウを持った企業も多くあり、M&Aにより海外企業が持つ技術やノウハウを自社に取り入れることで、新しい製品を開発できる可能性が高まります。
新商品の開発を実現できれば、企業の成長も大きく促進できるでしょう。
クロスボーダーM&Aのメリットの4つ目は、生産コストや税金の削減につながることです。
海外では、日本より税率や給与水準、家賃相場が低い国も少なくありません。
そのため、海外に拠点を移すことでコスト削減が可能なケースもあります。
とくに、製造業といった海外に工場を置いても問題ない場合に有効です。
近年では、東南アジアといった比較的時差が小さく、コストを低く抑えやすい地域に生産拠点を移す企業が増えています。
クロスボーダーM&Aのメリットの5つ目は、ブランド力の向上です。
クロスボーダーM&Aが成功すると、日本国内で話題となる可能性があります。
テレビや新聞、ニュースサイト、SNSなどで取り上げられれば、企業の認知度が上がるだけでなく、売上拡大も期待できます。
また、海外でのビジネスに意欲的な若い世代の認知度が高まれば、優秀な人材を獲得するチャンスも増えるでしょう。
クロスボーダーM&Aの注意点とリスクには、以下の5点が挙げられます。
それぞれ説明します。
カントリーリスクとは、M&Aの相手国・地域において政治・社会・経済などに大きな変化が起きることで収益が変動し、自社が損害を受けるリスクのことです。
たとえば、取引を予定している相手企業の国と日本の間で政治的な問題が起きた場合、資金を回収できなくなるほか、M&A取引が白紙になる可能性もあります。
カントリーリスクを予測することは困難ですが、日々、相手の国・地域の情勢を確認し、リスクに備えておきましょう。
法律リスクとは、取引相手の国と日本の法規制が異なることで、M&Aの手続きやM&A後の運営に問題が起こるリスクのことです。
クロスボーダーM&Aでは、取引相手が属する現地の法律に従い手続きを進めていきますが、国により法律や規制が異なります。
仮に、企業間ではスムーズに交渉が進んでも、現地の法律に抵触した場合にはM&Aを実行できません。
相手の国の法律について、事前にしっかりと把握しておくことが重要です。
訴訟リスクとは、訴訟に対する考え方や意識が、国や地域ごとに異なることで問題が生じるリスクのことです。
たとえば、日本では問題が起きても訴訟に発展するケースはそれほど多くありませんが、訴訟に発展しやすい国もあります。
日本よりも賠償金が高額になりやすい国もあり、訴訟の際には負担が大きくなる恐れもあります。
取引を予定している国での訴訟の扱いを確認するとともに、デューデリジェンスを徹底することが大切です。
環境リスクとは、国ごとに環境に関する規制や基準が異なることで問題が生じるリスクのことです。
たとえば、海外には日本より環境汚染の基準が厳しい国も少なくありません。
土壌汚染や水質汚染等の規制が厳しい国や地域と取引する際は、思わぬ問題に発展する可能性もあります。
そのため、必要に応じて十分な環境デューデリジェンスを行うことが重要です。環境デューデリジェンスは時間がかかるケースも多く、早めに対応するとよいでしょう。
クロスボーダーM&Aには、労働・人的問題リスクも考えられます。
海外とのクロスボーダーM&Aが失敗する原因として、雇用や処遇に対する考え方の不一致から、M&A実行後の統合が上手くいかないことが挙げられます。
人的な要因はM&A実行後の統合の成功に関わる重要なポイントであり、効果的にシナジー効果を生み出すためにも従業員間の連携が不可欠です。
クロスボーダーM&Aを成功させるためには、以下の7つのポイントを意識しましょう。
それぞれ説明します。
クロスボーダーM&Aを成功させるコツの1つ目は、現地の情報収集を十分に行うことです。
クロスボーダーM&Aを行う際は、国内のM&Aにはないリスクが伴うケースも多く、事前にしっかりと調査を行った上でM&Aについて判断することが重要です。
特に、以下の要素は事前に調査しておくべきと言えるでしょう。
仮に、自社の力だけでは情報収集が難しいのであれば、M&A仲介会社などの専門家へ調査を依頼するのもひとつの方法です。
クロスボーダーM&Aを成功させるコツの2つ目は、適切なバリュエーションを行うことです。
クロスボーダーM&Aにも平均買収額は存在しますが、相場については判断が難しいケースも少なくありません。
そのため、バリュエーションを行う際は対象となる事業の価値について、日本国内と現地市場における違いを考慮した上で算定する必要があります。
特に、新興国の企業とM&Aを行う際は日本市場との違いが大きい場合も多いため、より注意してバリュエーションを行うことが重要です。
クロスボーダーM&Aを成功させるコツの3つ目は、デューデリジェンスを十分に行うことです。
デューデリジェンスとは、買い手側が売り手企業について、財務・法務・人事・環境など多様な視点から徹底的に調査を行う工程を指します。
クロスボーダーM&Aでは、日本企業同士のM&Aにはないリスクが生じる可能性があります。
さらに、海外の情報は入手しづらいことも多く、クロスボーダーM&Aの経験が豊富な専門家の力も借りて十分にデューデリジェンスを行うことが重要です。
クロスボーダーM&Aを成功させるコツの4つ目は、ブレークアップフィーを確認することです。
ブレークアップフィーとは、何らかの理由でM&A取引が実行されなかった場合に、売り手が買い手に違約金を支払うことでM&A契約を終了できる旨を記した条項のことです。
事前にブレークアップフィー条項を定めておくことにより、万が一M&Aが実行されなくなった場合に、買い手企業は条項に従って違約金を受け取れます。
クロスボーダーM&Aには多くの時間や手間、費用がかかる上に、買い手企業はデューデリジェンスの負担もあります。
ブレークアップフィー条項を締結しておくと損害を最小限に抑えられるため、必ず確認しておきましょう。
クロスボーダーM&Aを成功させるコツの5つ目は、現地の法律に詳しい専門家を確保することです。
日本とは異なる法律に従って実行するクロスボーダーM&Aでは、現地の法律や文化を十分に理解した上で交渉を進めることが必須となります。
万が一、現地の法律に違反した場合は、罰則金の支払いが発生したり、企業のブランドイメージが損なわれたりする恐れがあります。
円滑にクロスボーダーM&Aを進めるためには、早い段階から現地の法律や事情に精通した専門家を起用し、慎重に検討を重ねることが大切です。
クロスボーダーM&Aを成功させるコツの6つ目は、計画的にPMIを行うことです。
M&Aは契約を締結しただけでは成功とは言えず、契約締結後の統合プロセス(PMI)が順調に行われ、期待したシナジー効果が得られる必要があります。
特にクロスボーダーM&Aでは、現地と距離が離れている上に文化や仕事に対する意識、言葉も異なるため、相手企業と連携を取りながら計画的にPMIを実施することが必須となるでしょう。
PMIについて詳しくは、M&A・事業承継後のPMI成功の秘訣!手順と事例から学ぶコラムもあわせてご覧ください。
クロスボーダーM&Aを成功させるコツの7つ目は、M&A仲介会社を利用することです。
クロスボーダーM&Aを行う際は、日本企業同士のM&Aよりもさらに慎重に進める必要があります。
しかし実際には、海外企業とのM&Aの経験やノウハウが少なかったり、まったくなかったりするケースが大多数です。
円滑にM&Aを進めて成功させるには、なるべく早い段階からM&A仲介会社に相談し、支援を受けることをおすすめします。
M&Aの相談先について詳しくは、無料で相談可能?M&A・事業承継のオススメ相談先や相談方法とは?をご参考ください。
クロスボーダーM&Aの事例を紹介します。
それぞれ説明します。
2024年1月、ヤマハ発動機株式会社は、ドイツDeutz社の傘下・Torqeedo社の全株式を取得しました。
概要は以下のとおりです。
ヤマハ発動機株式会社は、Torqeedo社を買収することでマリン版CASEのElectric分野を強化し、カーボンニュートラル対応を加速し、小型電動推進機や中型電動船外機でのシナジーを活かして電動推進船市場でのリーダーを目指します。
参考:マリン電動推進機メーカー「Torqeedo社」を買収~マリンCASE戦略電動領域の競争力強化、カーボンニュートラル達成を加速~
2024年1月、伊藤忠商事株式会社はイギリスの子会社European Tyre Enterprise Limited傘下のKwik-Fit (GB) Limitedを通じ、Fettle Bike Repair社の全株式を取得しました。
概要は以下のとおりです。
今回のM&Aを通じ、Fettle Bike Repair社の自転車メンテナンス事業の運営ノウハウ・マーケティング力を取り込み、子会社のKwik-Fit (GB) Limited社とのシナジー創出を期待している。
参考:英国自転車メンテナンス会社Fettle Bike Repair社の買収について
2023年12月、ワタミ株式会社はシンガポールのLEADER FOOD PTE.LTD.、PREMIUM SEAFOOD SUPPLIES PTE.LTD.、LEADER FOOD INDUSTRIES PTE.LTD.の3社について発行済株式総数の80%を取得しました。
3社はシンガポールに拠点をおき、シーフードや肉類の輸入・保管・加工・包装・供給事業を展開しています。
ワタミ株式会社は、今回のM&Aにより国内外のサプライチェーンを強化し、海外への販路拡大を目指します。
今回は、クロスボーダーM&Aの概要やメリットを解説するとともに、成功のコツや注意点を説明しました。
クロスボーダーM&Aには専門的な知識やノウハウが必要であり、専門家の支援が欠かせません。
ぜひこの記事を参考に、海外企業とのM&Aを円滑に進めていただければと思います。
なお、弊社のシェアモルM&Aは、
の4点で、他社様から選ばれております。
また、シェアモルM&AのコラムにはM&A・事業承継関連の記事も掲載しておりますので、あわせてご覧ください。
シェアモルM&Aでは無料相談を実施しておりますので、こちらよりお気軽にお問い合わせください。
最終更新日: 2025/1/13
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齋藤 康輔シェアモル株式会社 代表取締役
東京大学教養学部基礎科学科在学中に、半導体(シリコン)のシミュレーションを専攻する傍ら、人材会社にてインターン。
インターン中に人材会社向け業務システムを開発し、 大学卒業後の1年間、上記人材会社にて勤務後、 共同出資で2007年3月に上記システム「マッチングッド」を販売する会社、 マッチングッド株式会社を設立。
12年の経営の後、2019年1月に東証プライム上場企業の株式会社じげんに株式譲渡。
2019年9月、売却資金を元手に、シェアモル株式会社を設立。
自身のM&Aの経験から、買い主と売り主の間での情報の非対称性や、 M&A仲介会社が出している付加価値に疑問を感じ、 自身が思わず依頼したくなるような、 付加価値の高いM&A仲介サービスを提供したいと強く思い、 IT技術をフル活用したM&A仲介事業「シェアモルM&A」をスタート。
現在はシェアモルM&Aと、SEOに強い文章をAIが作成する「トランスコープ」を展開中。