最終更新日: 2025/1/13
「SaaS企業のバリュエーションはどのように算出するのか知りたい」
「SaaS企業のバリュエーションの注意点を知りたい」
このようにお考えではありませんか?
SaaS企業は従来の企業とは異なる部分があり、バリュエーションを考える際はSaaS企業の特徴を考慮して計算方法を選ぶ必要があります。
本記事では、SaaS企業のバリュエーション計算方法を解説するとともに、影響する指標や評価する際の注意点、改善するポイントを紹介します。
ぜひ、SaaS企業の企業価値を考える際の参考にしてください。
なお、弊社のシェアモルM&Aは、
の4点で、他社様から選ばれております。
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まずはSaaS企業のバリュエーションについて、以下の2点に焦点を当てて解説します。
それぞれ説明します。
SaaSは「Software as a Service」の略であり、SaaS企業は「クラウド上でソフトウェアやアプリケーションなどのサービスを提供する企業」を指します。
なお、提供するサービスのジャンルは問いません。
以下は、代表的なSaaS企業です。
従来の企業は一度の製品販売で収益を得る「ライセンスモデル」や「買い切り型」のビジネスを展開している一方で、SaaS企業は「サブスクリプションモデル」を採用していることが特徴です。
サブスクリプションモデルでは、契約者数の増加に伴い安定した売り上げが見込め、複数プランを提供する場合は上位プランの利用客が増えるほど売上は増加します。
バリュエーションとは、企業価値を算出して評価することです。
M&Aにおいては、バリュエーションによって企業価値を評価することで、売り手企業の適正な価格を考慮した上で交渉を進められます。
SaaS企業はサブスクリプションモデルをとっている特長から、継続的な収益や成長率、顧客維持率、コスト構造などを基にバリュエーションが評価される傾向にあります。
なお、M&Aにおけるバリュエーションについて詳しくは、事業譲渡・株式譲渡の価格算定方法とは?価格に影響する要素も解説をご参考ください。
SaaS企業のバリュエーション方法について、以下3つのポイントを解説します。
それぞれ説明します。
SaaS企業において一般的なバリュエーション方法の一つが「収益ベースのアプローチ」です。
SaaS事業以外の会社は通常、すでに実現した売り上げを中心に評価されるケースが多くあります。
しかし、SaaS企業は以下のような特徴から、収益をベースにした評価が広く採用されています。
SaaS企業のバリュエーションにおいては、将来の収益性や成長性が重視されるのが特徴です。
SaaS企業の具体的なバリュエーション方法としては、おもにマルチプル法(類似会社比較法)が用いられます。
マルチプル法はマーケットアプローチのひとつであり、マーケットアプローチはバリュエーションにおける以下3つのアプローチ法のひとつです。
マーケットアプローチ | 譲渡対象企業と類似する企業の取引価格を参考に企業価値を評価する方法 |
---|---|
コストアプローチ | 会社の保有している資産および負債を基準として、企業価値を評価するアプローチ方法 |
インカムアプローチ | 将来の収益やキャッシュフローに対して、リスクを反映した割引率を反映させて企業価値を評価する方法 |
マルチプル法では、評価したい企業と類似する企業の市場株価やM&A取引で成立した価格を参考に、評価対象企業の経営指標に一定の倍率(マルチプル)を乗じて算出します。
SaaS企業のバリュエーションによく用いられる倍率(マルチプル)を紹介します。
・PSR (株価売上高倍率)
・EV/Revenue(企業価値/収益)倍率
PSRは「Price Sales Ratio」の略で、時価総額を年間売上で割って算出します。
「データで振り返る最新SaaS企業・業界動向」によると、2023年12月末のSaaS業界全体のPSR平均値は5.1倍です。
EV/Revenueは、株価に加えて企業の負債や現金の影響も考慮した指標であり、より包括的な企業価値を反映可能です。
SaaS Capitalのデータによると、SaaS企業のEV/Revenue倍率は2021年のピーク時から減少し、2024年は6.8倍となっています。
ここからは、SaaS企業のバリュエーションに影響する指標を紹介します。
それぞれ説明します。
月次経常収益とは、毎月継続的に得られる収益のことです。
事業の健全度合いを知る指標として利用でき、MRRの推移から企業の中長期的な成長性・安定性を判断できます。
SaaSのようなサブスクリプションモデルのビジネスにおいては特に、事業の成長状況を把握する重要な指標となります。
年間経常収益 とは、毎年決まって得られる収益のことです。
なお、毎年得られる収益を指すため、初期費用といった一時的な売上は含めません。
月次経常収益(MRR)と類似していますが、MRRは月ごと、ARRは年ごとに継続発生する収益を指します。
顧客獲得コストは、1人の顧客を獲得するために必要となる費用のことです。
SaaS事業では、顧客獲得のためのマーケティングや営業といったコストが高くなる傾向にあり、CACを低く抑えることは非常に重要です。
新規顧客を効率良く獲得する方法を考える上でも、CACの把握は欠かせない指標と言えるでしょう。
顧客生涯価値とは、取引開始から終了までの期間に1人または1社の顧客がもたらす利益のことです。
LTVに注目することで、顧客を保持するための施策がきちんと機能しているか、顧客が利益をもたらし続けてくれるビジネスが成り立っているかを判断できます。
顧客解約率は、顧客が契約を解約した割合をあらわします。
サブスクリプションモデルを採用するSaaS企業にとって、サービス開始後、いかに長く継続利用してもらえるかが収益の安定に直結します。
そのため、解約率を知り、改善することは極めて重要です。
粗利益は、売上高から売上原価を差し引くことで得られる値で、企業の成長率向上に重要な指標です。
粗利益の割合が高いと事業成長のために投入できる資金量が多くなり、反対に粗利益が低い場合は、サービスの開発費が高すぎる可能性など、問題点を見つけるきっかけにもなります。
売上継続率は、既存顧客から得られる収益の維持率を示し、NRRを見ることで既存顧客がサービスに支払っている金額の増減が分かります。
高い水準でNRRを維持できているならば、価格に見合ったサービスを提供できていて、既存顧客からの収益を維持できると考えられます。
SaaS企業を評価する際は、以下の5点に注意しましょう。
それぞれ説明します。
SaaS企業を評価する際は成長率に注目しますが、高い成長率が一時的である場合もあり、成長率にのみ注目すると過大評価につながる可能性があります。
正しく評価するためには成長率だけを追わず、成長の持続性や、成長に必要なコストも併せて慎重に見定めましょう。
サブスクリプションモデルにおいては、いかに長く既存顧客を維持できるかが継続的な収益に直結します。
顧客維持率が低い、または顧客解約率が高い場合は収益を持続できない可能性があるため、顧客維持率や顧客解約率をしっかりと評価しましょう。
SaaS企業の成長を考える上で、顧客獲得コスト(CAC)と顧客生涯価値(LTV)のバランスは非常に重要です。
仮に成長が見られていたとしても、LTVがCACを十分に上回っていないと企業の利益を圧迫してしまいます。
CACとLTVを個別に見るだけでなく、バランスを適切に評価し、成長が利益にどのように影響しているかを確認しましょう。
SaaS企業は、企業ごとに成長段階や収益モデルが大きく異なります。
そのため、すべての企業に対して同じ基準を適用すると各企業の特性を反映できず、評価が大幅にずれてしまう可能性があります。
SaaS企業を評価する際は一律のアプローチを避け、企業ごとに評価をカスタマイズすることが重要です。
EV/Revenue倍率はSaaS企業のバリュエーションに頻繁に用いられますが、EV/Revenue倍率だけではコスト構造や成長の持続性など、他の重要な要素が反映されません。
企業の全体像を捉えられずに誤った評価をしてしまう可能性があるため、他の要素もあわせて検討しましょう。
SaaS企業バリュエーションを改善するためには、以下5つのポイントを意識しましょう。
それぞれ説明します。
1つ目のポイントは、顧客の解約率を低減することです。
顧客の解約率を下げることは、SaaS企業の収益を安定化することに直結します。
仮に「料金体系が分かりにくい」「初期設定が難しい」「自社のニーズとサービスがズレてきた」といった問題が起こると、顧客が離れる原因となります。
顧客が製品に触れる最初のポイントから継続して使用する段階まで、各ステップで問題が起こらないよう対策し、満足度を高めることが大切です。
2つ目のポイントは、顧客体験を改善することです。
以下は、顧客が製品やサービスを快適に使い続けられるような対策の一例です。
顧客の満足度を上げることで、解約率の低下と売上の増加が期待できます。
3つ目のポイントは、最適な価格戦略の実現です。
例えば、機能が異なる複数の料金プランを提供すると、顧客は成長やニーズに合ったプランを選択できるようになり、価格に満足しやすくなるでしょう。
また、提供するサービスの価格設定は市場の需要や顧客の価値感に合致しているか、しっかりと確認しましょう。
4つ目のポイントは、スケーラブルな収益成長戦略を推進することです。
スケーラブル(拡張可能)な収益成長戦略とは、事業が成長しても利益率や収益の効率性を維持できる戦略を意味します。
収益の成長に伴ってコストも急増するのではなく、収益が増えてもコストは緩やかにしか増加しない、効率的なビジネスモデルを構築することが重要です。
5つ目のポイントは、製品の独自性を強化して市場でのポジションを確立することです。
差別化とポジショニングがしっかりしている企業は顧客からの支持を得やすく、価格競争に巻き込まれにくいため、競合他社とは異なる特徴や強みを持たせることが重要です。
今回はSaaS企業のバリュエーション計算方法を解説するとともに、影響する指標や評価する際の注意点、改善するポイントを解説しました。
SaaS企業は従来の企業とは異なる特徴があり、バリュエーションを考える際はSaaS企業の特徴を考慮して評価する必要があります。
ぜひ、本記事をSaaS企業の企業価値を考える際の参考にしていただければと思います。
なお、弊社のシェアモルM&Aは、
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また、シェアモルM&AのコラムにはM&A・事業承継関連の記事も掲載しておりますので、あわせてご覧ください。
シェアモルM&Aでは無料相談を実施しておりますので、こちらよりお気軽にお問い合わせください。
最終更新日: 2025/1/13
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齋藤 康輔シェアモル株式会社 代表取締役
東京大学教養学部基礎科学科在学中に、半導体(シリコン)のシミュレーションを専攻する傍ら、人材会社にてインターン。
インターン中に人材会社向け業務システムを開発し、 大学卒業後の1年間、上記人材会社にて勤務後、 共同出資で2007年3月に上記システム「マッチングッド」を販売する会社、 マッチングッド株式会社を設立。
12年の経営の後、2019年1月に東証プライム上場企業の株式会社じげんに株式譲渡。
2019年9月、売却資金を元手に、シェアモル株式会社を設立。
自身のM&Aの経験から、買い主と売り主の間での情報の非対称性や、 M&A仲介会社が出している付加価値に疑問を感じ、 自身が思わず依頼したくなるような、 付加価値の高いM&A仲介サービスを提供したいと強く思い、 IT技術をフル活用したM&A仲介事業「シェアモルM&A」をスタート。
現在はシェアモルM&Aと、SEOに強い文章をAIが作成する「トランスコープ」を展開中。