最終更新日: 2025/1/31
「DCF法とは何か、計算方法を知りたい」
「DCF法のメリット・デメリットを把握しておきたい」
このようにお考えではありませんか?
本記事では、M&A・事業承継におけるDCF法の概要や、計算方法について解説します。
また、メリット・デメリットも説明するため、企業価値算定の際にぜひ参考にしてみてください。
なお、弊社のシェアモルM&Aは、
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DCF法の概要について解説します。
DCF法の基本を押さえておきましょう。
DCF法とは「Discounted Cash Flow」の略で、企業の将来期待できるキャッシュフローを推定して、現在価値へ割引する方法です。
DCF法は、3〜5年後のキャッシュフローから、現在価値へ割引した合計額が事業価値だと考えます。
DCF法は理論的だと言われる一方で、事業計画の立案に手間がかかる側面もある評価方法です。
中小M&Aガイドラインでは、企業価値評価のうち、DCF法はインカムアプローチに分類されます。
「将来性が低く稼ぎにくくなる事業」よりも「事業承継後も稼げる事業」の方が買いたいと考える経営者は多いでしょう。
そのため、過去の利益や現在の資産だけでなく、将来どれほどの利益を生み出せるかを考慮できるのがDCF法です。
なお、M&Aの場合はベンチャー投資ではありませんので、あくまでも現時点での結果に基づいて評価されることが多いです。
企業価値評価別の一般的な特徴を以下に示します。
項目 | コストアプローチ | マーケットアプローチ | インカムアプローチ |
---|---|---|---|
客観性 | ◎ | ◎ | △ |
市場取引環境を反映 | △ | ◎ | 〇 |
将来の収益獲得能力を反映 | △ | 〇 | ◎ |
固有の性質を反映 | 〇 | △ | ◎ |
◎:優れている 〇:やや優れている △:問題となるケースもある
DCF法を含むインカムアプローチは、事業の将来性や固有の性質を反映できる一方、将来予測の客観性を確保することが難しい方法です。
コストアプローチは客観的な資産価値に基づくため、評価が明確で信頼性は高い一方、企業の将来収益性や成長性を反映しにくい面があります。
マーケットアプローチは市場に基づく評価のため、現実的で客観性が高い一方、市場変動に影響されやすく固有の性質を反映しにくい面があります。
なお、価格算定方法の詳細は「事業譲渡・株式譲渡の価格算定方法とは?価格に影響する要素も解説」で解説しているため、ぜひ併せて参考にしてみてください。
DCF法の計算方法について、以下のステップで解説します。
なお、実際の計算結果は設定する値によって変動する点に注意が必要です。
はじめに、通常3〜5年程度の事業計画をベースに、FCF(フリーキャッシュフロー)を設定します。
FCFとは、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いた、企業が自由に使用できるお金です。
なお、財務キャッシュフローは含まれません。
FCF=営業利益×(1-税率)+減価償却費-設備投資額-運転資本増加額 |
ここで導き出したFCFが割引対象となります。
将来のFCFは、過去の業績や市場環境を考慮して予測しなければなりません。
そのために、3〜5年の事業計画を事前に立てておく必要があります。
FCFを設定後、現在価値へ換算するための割引率を求めます。
割引率は、WACC(加重平均資本コスト)の利用が一般的です。
WACCとは、企業が負担する株主資本コストと負債コストを加重平均したものです。
WACC(%)=有利子負債総額÷(有利子負債総額+株式時価総額)×(1-実効税率)×負債コスト+株式時価総額÷(有利子負債総額+株式時価総額)×株主資本コスト |
割引率を設定すると、企業価値を現在価値へ割引できます。
FCFの現在価値=FCF÷WACC |
WACCが低すぎると企業価値は過大評価されやすく、高すぎると過小評価される可能性があります。
市場環境や企業リスクに応じてWACCを適用してください。
FCFと割引率の計算後、TV(ターミナルバリュー)を設定し、予測期間以降の企業価値を反映させます。
TVとは、企業が将来も価値を生み続けることを表す指標です。
TV=予想期間最終年度のFCF×(1+成長率)÷(割引率-成長率) |
TVは企業が将来も存続し、一定の成長を続ける前提で計算されるため、企業価値の大部分を占めることが多いです。
一般的に、DCF法で導き出された企業価値のうち、50%以上がTVによるものとなるケースもあります。
ただし、将来の成長率は不確実性が高く、信憑性や簡易性の観点から0%とするケースもあります。
各期のFCFに対して割引率で現在価値へ変換し、各期の現在価値とTVを合計すると、事業価値を計算可能です。
事業価値に、事業とは無関係である非事業資産を合計すると、企業価値を計算できます。
事業価値=各期のFCF÷(1+割引率)^tの合計+TV÷(1+割引率)^n 企業価値=事業価値+非事業資産 |
非事業資産には、有価証券や遊休不動産などがあります。
事業とは無関係な資産が過大・過小評価されていないか確認しておきましょう。
DCF法はそれぞれの前提条件によって結果が変わるため、設定値の妥当性を十分に検討してください。
なお、M&Aによる税金については「【最新版】M&Aによる株式譲渡や事業譲渡の税金について徹底解説」で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
メリットは以下の3点です。
それぞれの詳細について解説します。
DCF法における最大の強みは、企業の将来性を反映できる点です。
たとえば、新製品の開発や新市場への進出など、将来的な事業展開による収益増加の可能性を評価に反映可能です。
たとえば、コストアプローチのような評価方法では、過去の実績に依存しやすい側面があります。
DCF法であれば、将来期待できるキャッシュフローを重視するため、成長戦略がある企業の価値を適切に評価可能です。
成長フェーズの企業や新規事業を積極的に展開する企業にとって、DCF法の活用は適正な企業価値を算出しやすくなります。
DCF法は企業の財務状況、市場環境などによる投資リスクを割引率に反映可能です。
たとえば、リスクの高い企業ほど割引率も高くなり企業価値が低く設定され、より現実的に評価できます。
一方、安定した経営基盤を持つ企業は割引率が低く設定できるため、評価額が高くなります。
DCF法ではリスクを適切に加味し、過大評価や過小評価を防げるのがメリットです。
M&Aや事業承継において「事業のリスクをどの程度考慮するか」がポイントとなるため、DCF法を活用すればより現実的な企業価値を算定できます。
DCF法では、遊休資産や余剰資産など、企業固有の価値も評価に反映可能です。
企業が保有する未使用の不動産や投資有価証券、余剰現金などはDCF法の計算時に「非事業資産」として企業価値に加算されます。
そのため、企業が事業収益以外にも資産を多く保有している場合、企業価値を適正に評価できます。
事業承継の際は、事業収益だけでなく資産価値も考慮しなければなりません。
DCF法を活用すれば、企業が保有する全ての価値を反映でき、M&A・事業承継の際により公平で包括的な企業価値評価を行えます。
デメリットは以下の2点です。
DCF法の利点だけでなく、デメリットを把握しておきましょう。
DCF法は、前提条件によって評価が高くなる可能性があります。
たとえば、成長率や割引率の設定によって企業価値が大きく変動し、過大評価につながるおそれがあるでしょう。
過大評価の結果、実際の業績が予測を下回ると投資回収は困難になり、財務的な負担が増大するリスクもあります。
M&Aにおいて買収価格の妥当性を検証する際には、マーケットアプローチやコストアプローチなど、DCF法以外の評価方法と併用するのがおすすめです。
他の評価方法と併用すれば、より適正な企業価値を見極められます。
DCF法は、恣意性の排除が困難な点もデメリットです。
評価者の主観や意図によってFCFや成長率が設定されるため、結果が左右されやすい特徴もあります。
たとえば譲受側は低い評価を、譲渡側は高い評価を望む傾向があり、それぞれの立場によって前提条件や予測が異なる可能性もあります。
公平な企業価値評価を行うには、DCF法の前提条件を客観的なデータに基づいて設定したり、他の評価手法と組み合わせたりすることがポイントです。
恣意性の排除が困難な分、設定した数値の根拠を示せれば、信頼性を高められるでしょう。
DCF法は企業の将来性を評価できる計算方法で、投資リスクを反映できるメリットがあります。
一方DCF法のようなインカムアプローチは、客観性を確保することが難しいデメリットもあります。
より信頼性を高めるためにも、コストアプローチやマーケットアプローチによる方法も検討しましょう。
また、割引率・成長率を設定する根拠として過去の業績データや市場の成長率予測、第三者機関によるレポートなどを活用するのが望ましいです。
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また、弊社コラムではM&A・事業承継に関する記事を掲載しておりますので、併せてご参照ください。
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最終更新日: 2025/1/31
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齋藤 康輔シェアモル株式会社 代表取締役
東京大学教養学部基礎科学科在学中に、半導体(シリコン)のシミュレーションを専攻する傍ら、人材会社にてインターン。
インターン中に人材会社向け業務システムを開発し、 大学卒業後の1年間、上記人材会社にて勤務後、 共同出資で2007年3月に上記システム「マッチングッド」を販売する会社、 マッチングッド株式会社を設立。
12年の経営の後、2019年1月に東証プライム上場企業の株式会社じげんに株式譲渡。
2019年9月、売却資金を元手に、シェアモル株式会社を設立。
自身のM&Aの経験から、買い主と売り主の間での情報の非対称性や、 M&A仲介会社が出している付加価値に疑問を感じ、 自身が思わず依頼したくなるような、 付加価値の高いM&A仲介サービスを提供したいと強く思い、 IT技術をフル活用したM&A仲介事業「シェアモルM&A」をスタート。
現在はシェアモルM&Aと、SEOに強い文章をAIが作成する「トランスコープ」を展開中。